SaaS営業では、架電数、メール送信数、アポイント数など、活動量をKPIとして設定するケースがあります。これらは営業活動を管理するために必要な指標です。
しかし、アポイント数を増やすことだけを目的にすると、商談は増えているのに受注が増えない状態が起きます。
営業活動の目的は、アポイントを獲得することではなく、受注を獲得し、売上をつくることです。
そのため、営業KPIは受注目標から逆算して設計する必要があります。
まず、売上目標を受注数に分解する
例えば、月間の新規売上目標が500万円で、1社あたりの平均契約金額が100万円の場合、必要な新規受注数は5件です。
ここから、現在の受注率をもとに必要な商談数を計算します。商談から受注までの受注率が25%であれば、5件を受注するには20件の有効商談が必要です。
さらに、アポイントから実際に商談が行われる実施率が80%であれば、25件のアポイントが必要です。
このように、受注から逆算することで、本当に必要な営業活動量を算出できます。
SaaS営業のKPIツリー
SaaS営業では、次のように営業プロセスを分解します。
重要なのは、すべての企業で同じKPIを追うことではありません。自社の営業プロセスに合わせて、受注までに必要な段階を設定することです。
アポイント数だけでは、問題の場所が分からない
仮に、毎月30件のアポイントを獲得しているにもかかわらず、受注が1件しかないとします。この場合、アポイント数を40件に増やす前に、どこで案件が止まっているかを確認する必要があります。
- 商談実施率が低い
- ターゲット企業が合っていない
- 初回商談から案件化していない
- トライアルが利用されていない
- 稟議に進んでいない
- 決裁者に価値が伝わっていない
- 商談後のフォローが遅い
営業活動量を増やす前に、最も大きく離脱している工程を特定することが重要です。
SaaS営業で確認すべき主なKPI
アポイント率
アプローチした企業のうち、何件がアポイントになったかを確認します。低い場合は、ターゲット、訴求内容、アプローチ方法を見直します。
商談実施率
設定したアポイントのうち、実際に商談が行われた割合です。低い場合は、アポイントの質や事前確認、リマインド方法に問題がある可能性があります。
案件化率
初回商談から、具体的な導入検討へ進んだ割合です。低い場合は、顧客課題の深掘りや提案内容、ターゲット設定を見直します。
トライアル開始率
案件化した企業のうち、トライアルやPoCへ進んだ割合です。低い場合は、検証する目的や条件が伝わっていない可能性があります。
トライアル利用率
発行したアカウントのうち、実際に利用された割合です。単にログインしたかだけではなく、受注につながる主要機能が使われたかを確認します。
トライアル成功率
設定した成功条件を達成した企業の割合です。成功条件が曖昧な場合、このKPI自体を計測できません。
稟議移行率
トライアルや提案後に、正式な社内稟議へ進んだ割合です。低い場合は、事業価値、ROI、決裁者への提案が不足している可能性があります。
受注率
商談や案件のうち、受注した割合です。全体だけではなく、業種、企業規模、流入経路、担当者、商材別に確認すると、成果が出やすい条件が分かります。
平均契約金額
1件あたりの受注金額です。受注数が増えても平均契約金額が下がれば、目標売上に届かない可能性があります。
営業期間
初回接触から受注までにかかる期間です。案件が特定の段階で長く滞留していないかを確認します。
先行指標と結果指標を分ける
受注数や売上は重要ですが、月末になってから不足に気づいても間に合いません。そのため、結果指標と先行指標を分けて管理します。
| 結果指標 | 先行指標 |
|---|---|
| 受注数 売上 受注率 平均契約金額 | 有効商談数 案件化数 トライアル利用数 稟議数 次回商談設定数 決裁者との商談数 |
先行指標を見ることで、将来の受注数が不足する可能性を早い段階で把握できます。
すべてのKPIを改善しようとしない
営業KPIを細かく設定すると、すべての数字を改善したくなります。しかし、同時にすべてを改善するのは現実的ではありません。
重要なのは、受注に最も大きな影響を与えているボトルネックを特定することです。
営業活動量を増やすよりも、ボトルネックを一つ改善した方が、少ない負担で受注数が増える場合があります。
KPIは営業担当者を管理するためだけのものではない
KPIは、営業担当者を評価するためだけの数字ではありません。営業プロセスのどこに問題があるかを特定し、改善するための指標です。
数字が悪いときに、単純に「もっと架電してください」「アポイントを増やしてください」と指示するだけでは、本当の原因は解決しません。
- ターゲットが間違っているのか
- 提案内容が合っていないのか
- 商談品質に問題があるのか
- トライアルが設計されていないのか
- 決裁者に届いていないのか
これらを判断するためにKPIを利用します。
まとめ|営業KPIは受注から逆算する
SaaS営業で追うべきKPIは、架電数やアポイント数だけではありません。受注までのプロセスを分解し、各段階の転換率を確認する必要があります。
- 売上目標を決める
- 必要な受注数を算出する
- 受注率から必要商談数を逆算する
- 商談率から必要アポイント数を算出する
- 各工程のボトルネックを特定する
- 最も大きな課題から改善する
活動量を増やすこと自体を目的にするのではなく、受注を増やすために必要な活動と改善点を明確にすることが重要です。