SaaS営業では、商談担当者から好意的な反応を得たにもかかわらず、その後検討が進まないことがあります。
商談では「社内で検討します」「上司に確認します」「一度持ち帰ります」と言われ、その後は何度連絡しても「まだ検討中」という状態が続きます。
原因の一つは、初回商談が担当者への商品説明で終わり、社内稟議や意思決定まで設計されていないことです。
SaaS営業は、商品を説明する仕事ではなく、顧客の意思決定を前に進める仕事です。
初回商談の目的は、商品説明だけではない
初回商談では、機能や料金を説明する前に、顧客の課題と意思決定の流れを確認する必要があります。
- 現在どのような業務を行っているか
- どのような問題が起きているか
- 問題によって、どのような損失が発生しているか
- 誰がその問題を強く感じているか
- 誰が導入に関わるか
- 最終的な決裁者は誰か
- 導入判断には何が必要か
- いつまでに改善したいのか
- 何もしなかった場合に何が起きるか
サービスの説明だけでは「便利そう」で終わります。課題による事業上の影響を明確にすることで、顧客が今導入する理由をつくれます。
関係者を整理する
SaaSの導入には、主に次の関係者が存在します。
利用者
実際にサービスを使用する人です。操作性や業務負担を重視します。
推進担当者
社内で導入を進める人です。社内説明のしやすさや導入後の成功を重視します。
管理職
部署全体の生産性、管理、標準化などを重視します。
情報システム・法務・セキュリティ担当者
システム連携、セキュリティ、契約条件、個人情報の管理などを確認します。
決裁者
費用対効果、事業への影響、投資回収、リスクを重視します。
関係者ごとに関心が異なるため、同じ資料と同じ説明だけでは不十分です。誰に、どの価値を伝えるべきかを整理する必要があります。
担当者が社内説明できる状態をつくる
多くの場合、営業担当者が決裁者に直接説明できるとは限りません。目の前の担当者が、営業担当者の代わりに社内でサービスを説明します。
しかし担当者は、自社サービスの営業担当者ではありません。商談で聞いた内容をすべて正確に説明できるとは限らず、資料をそのまま転送するだけになることもあります。
そのため、社内説明に必要な情報を営業側から用意する必要があります。
- 現在の課題
- 導入する目的
- 導入によって変わること
- 定量的な効果
- 費用
- 導入スケジュール
- リスクと対策
- 他社事例
- 比較検討した選択肢
- 推奨する理由
単なるサービス紹介資料ではなく、顧客がそのまま社内で説明できる資料にすることが重要です。
ROIは、顧客と一緒に計算する
SaaSの費用対効果を示す際、一般的な導入効果だけを説明しても説得力は弱くなります。顧客の実際の数値を使って試算する必要があります。
例えば、業務効率化SaaSであれば、対象となる従業員数、1人あたりの作業時間、月間の作業回数、人件費、削減できる時間を確認します。
月18万円、年間216万円の削減効果
年間利用料が120万円であれば、年間216万円の削減効果に対して120万円の投資となります。
ただし、無理に大きな効果を見せる必要はありません。顧客と条件を確認し、納得できる計算を行うことが重要です。
商談ごとに次の行動を決める
商談終了時に「それでは社内でご検討ください」で終わると、案件の主導権を失います。商談では、必ず次の行動を具体的に決めます。
- 次回は決裁者も含めて説明する
- セキュリティチェックシートを送付する
- 顧客から現在の業務時間を共有してもらう
- ROI試算を作成する
- トライアルの対象者を決める
- 稟議に必要な資料を確認する
- 次回の打ち合わせ日を決める
「検討する」ではなく、誰が、何を、いつまでに行うのかを明確にします。
商談後のフォローは、状況確認だけにしない
商談後に「その後、検討状況はいかがでしょうか」と連絡するだけでは、検討が進む理由にはなりません。
フォローでは、顧客の検討を前に進める情報を提供します。
- 同じ課題を持つ企業の事例
- 稟議用の資料
- ROIの試算
- 比較表
- セキュリティ資料
- 導入スケジュール
- トライアルの設計案
- 決裁者向けの説明資料
営業担当者の役割は、状況を確認することではなく、顧客が意思決定できない原因を解消することです。
受注につながる商談設計の流れ
まとめ|SaaS営業は、顧客の意思決定を支援する仕事
SaaS営業では、担当者にサービスを気に入ってもらうだけでは受注できません。担当者が社内で説明し、利用者、管理職、情報システム部門、決裁者から合意を得る必要があります。
そのため営業担当者は、関係者を把握する、立場ごとに価値を変える、ROIを具体化する、稟議資料を用意する、次の行動を明確にする、意思決定を止めている要因を解消する必要があります。
商談を商品説明の場として捉えるのではなく、顧客の意思決定を前に進めるプロセスとして設計することが、受注率の向上につながります。